2020年 | プレスリリース?研究成果
多発性硬化症における新たな自己抗体関連免疫病態の解明と疾患概念の確立 -原因となる自己抗体の種類に応じた治療法開発の必要性-
【研究のポイント】
- 多発性硬化症に代表される脱髄性疾患注1の多くは原因不明であるが、新しく発见された自己抗体による脱髄性疾患の免疫学的病态が、急性散在性脳脊髄炎注2の病态と同様の病理学的特徴があることを示した。
- この病理学的特徴は、代表的な脱髄性疾患である多発性硬化症注3や视神経脊髄炎注4とは异なることを明らかにした。
- 多様な症状を示す脱髄性疾患においては、原因となる自己抗体の种类によって治疗法が异なり、治疗経过が大きく左右されることから、疾患を引き起こす仕组みの违いが明らかになったことは大きな意义を持つ。
【研究概要】
脱髄性疾患は、神経繊維を電気的に絶縁している髄鞘と呼ばれる絶縁体が脱落し、神経信号の伝達に障害をきたす疾患です。东北大学大学院医学系研究科の高井良樹助教、三須建郎講師、青木正志教授を中心とする研究グループは、脱髄性疾患のうち、髄鞘に存在するタンパク質(ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質)に対する自己抗体が原因で血管周囲の神経繊維の脱髄が生じる一群の疾患が、急性散在性脳脊髄炎と似た特徴を持つことを初めて報告しました。本研究は、代表的な脱髄性疾患である多発性硬化症や视神経脊髄炎と異なる別の病態を示す脱髄性疾患の存在を明らかにしたもので、脱髄性疾患の全体像を大きく変える発見です。今後、それぞれの疾患の治療法の開発にも大いに貢献することが期待されます。
本研究成果は、2020年5月15日(现地时间)に、英国神経学会雑誌Brain誌(电子版)に掲载されました。

図1.惭翱骋抗体関连疾患の免疫病态とアクアポリン4抗体関连视神経脊髄炎との违い
アクアポリン4(础蚕笔4:図の右侧)抗体が関连する视神経脊髄炎においては、抗アクアポリン4抗体が脳と血管を隔てるバリアー(血液脳関门)に存在するアクアポリン4に接着し、バリアーが损伤されることで、二次的に髄鞘を构成する细胞が伤害されると、髄鞘の远位侧(髄鞘の最内侧)から脱髄が生じる。
一方、惭翱骋抗体関连疾患(惭翱骋:図の左侧)では、リンパ球(颁顿4阳性细胞)が血管周囲に浸润し血液脳関门が伤害されると、自己抗体が组织内で髄鞘表面の惭翱骋に接着し、さらにマクロファージによる贪食作用を受け、特徴的な血管周囲性の脱髄が引き起こされることが判明した。
【用语解説】
注1. 脱髄性疾患:神経線維を覆う髄鞘に対して炎症が生じることにより、神経繊維は保たれたまま髄鞘が選択的に脱落する疾患の総称。何らかの原因で自己の免疫が髄鞘を攻撃することで起こると考えられています。多発性硬化症がその代表的疾患ですが、多くは原因不明です。その他には急性散在性脳脊髄炎や同心円硬化症などもあります。
注2. 急性散在性脳脊髄炎:脳内に多発する散在性の脱髄病変が特徴で、主に感冒やワクチン接種後に脳症や視神経炎、脊髄炎などを急性に発症する脱髄性疾患。近年、特に小児の症例の約半数に髄鞘のタンパク質(ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質)に対する自己抗体があると示唆されている。
注3. 多発性硬化症:脱髄性疾患の代表的疾患。再発と寛解(症状が収まること)を繰り返し、急性炎症および慢性進行性の脱髄が起こる。もともとの多発性硬化症の定義には様々な症状が含まれていたことから複数の疾患が混在していたと考えられ、近年、別の疾患として区別される疾患が増えている。
注4. 視神経脊髄炎:主に視神経炎や脊髄炎を起こす急性炎症性疾患。古くから多発性硬化症との異同が議論されてきた。2004年に、特異的な自己免疫抗体として抗アクアポリン4抗体が同定され、髄鞘ではなくアストロサイトを標的とする疾患と判明したことから、多発性硬化症とは区別される疾患となった
问い合わせ先
(研究に関すること)
东北大学病院脳神経内科学
讲师 叁须建郎(みすたつろう)
电话番号:022-717-7189
贰メール:尘颈蝉耻*尘别诲.迟辞丑辞办耻.补肠.箩辫(*を蔼に置き换えてください)
(取材に関すること)
东北大学大学院医学系研究科?医学部広报室
东北大学病院広报室
电话番号:022-717-7891
贵础齿番号:022-717-8187
贰メール:辫谤-辞蹿蹿颈肠别*尘别诲.迟辞丑辞办耻.补肠.箩辫(*を蔼に置き换えてください)