2021年 | プレスリリース?研究成果
表情から感情を読み取る過程を神経回路モデルで再現 -自閉スペクトラム症の症状出現のメカニズム理解に期待-
【本学研究者情报】
○东北大学病院精神科 助教 高桥雄太
【発表のポイント】
- 生体脳を模倣した神経回路モデル注1に人间の表情変化を予测するような学习をさせたところ、自然発生的に感情ごとのカテゴリが形成されることを明らかにした。
- 神経回路モデルでニューロンの活动を异常に変化させるよう设定したところ、感情认识や汎化注2の変调といった自闭スペクトラム症注3に类似した症状が観察された。
- 神経回路モデルで精神障害の症状を再现する「计算论的精神医学」アプローチにより、自闭スペクトラム症の症状出现のメカニズム理解に贡献できることを示した。
【概要】
ヒトは表情の画像を见ることで、「悲しみ」「怒り」などの异なる感情を认知することができると考えられています。しかし、発达过程において、表情を见ただけで异なる感情をどのようにして判断できるようになるのか、その仕组みはほとんどわかっていません。
东北大学病院精神科の高桥雄太助教と东北大学大学院医学系研究科の富田博秋教授、庆应义塾大学理工学部の村田真悟専任讲师、国立精神?神経医疗研究センターの山下祐一室长らのグループは、ヒトの発达过程で表情から感情を认识するようになる过程と、自闭スペクトラム症を持つ人におけるその変化を、コンピュータ上で脳を再现した神経回路モデルを用いて再现することに成功しました。
本研究は、ヒトが他人の表情を目で见て学习するだけで感情の认识が可能になる过程を初めて明らかにした重要な报告です。本研究を発展させることで、ヒトが感情を认识するようになる过程や、自闭スペクトラム症の人々の认知特性についての理解を进め、感情を认识しづらい障害を持つ人に対する适切な介入方法の検讨への贡献が期待されます。
本研究成果は、2021年7月26日午前10時(現地時間、日本時間7月26日午後6時)Scientific Reports誌(電子版)に掲載されました。

図1.研究の概念図
今回の研究では予测符号化理论に基づき生体脳の情报処理を再现した再帰型神経回路モデルを使用しています。この神経回路モデルでは生体脳の情报処理に近づけるために高次と低次の2つの阶层のニューロンを用意しています。このモデルに表情动画における颜のパーツの动きを予测する(予测误差を最小化する)ような学习を行うと、感情の正解を与えていないにも関わらず、高次ニューロンの活动が感情ごとのクラスタを形成すること、さらに未知の表情に対しても感情认识が可能となる(汎化できる)ことを明らかにました。さらに、ニューロンの活动性を人工的に引き起こした场合、感情クラスタが不明瞭になり、汎化能も低下するという、自闭スペクトラム症(础厂顿)の人と类似した症状が観察されました。
【用语解説】
注1. 神経回路モデル:脳の機能に見られる特性を数理的にモデル化したもの。コンピュータ上で動作させることができるため、複雑な情報処理過程についても可視化して調べることができる。
注2. 汎化:様々な異なる刺激に共通する性質や法則を見出すこと。この機能により、未経験の場面に対しても、既知の情報との共通点を見出し、持っている知識を適用して対応することができる。
注3. 自閉スペクトラム症:社会的コミュニケーションや対人関係の障害、パターン化した興味や活動といった特徴をもつ神経発達症。有病率は約1%と報告され、男女比は4:1 で男性に多い。従来の自閉症からアスペルガー障害や特定不能の広汎性発達障害を含む概念である。汎化の障害などの認知特性が指摘されているが、そのメカニズムはあまりわかっていない。病態解明のためには神経回路と関連した脳の情報処理の変化に関する研究が重要な役割を担っている。
注4. 再帰型神経回路モデル:ニューロン素子の入力として過去の活動履歴も考慮することで、脳の時間的な情報表現を模した神経回路モデル。
注5. 予測符号化理論:脳の認知機能を広く説明する計算理論。この理論においては、脳は外界に対する階層的な内部モデルを持ち、それに基づいて常に次に受け取る感覚刺激の予測を生成しており、実際の刺激との誤差を最小化するように外界に適応していくと考えられている。
问い合わせ先
(研究に関すること)
东北大学病院 精神科
助教 高橋 雄太
罢贰尝:022-717-7262
贰-尘补颈濒:测耻迟补.迟补办补丑补蝉丑颈*尘别诲.迟辞丑辞办耻.补肠.箩辫(*を蔼に置き换えてください)
(取材に関すること)
东北大学大学院医学系研究科?医学部広报室
东北大学病院広报室
罢贰尝:022-717-8032
贵础齿:022-717-8931
贰-尘补颈濒:辫谤别蝉蝉*辫谤.尘别诲.迟辞丑辞办耻.补肠.箩辫(*を蔼に置き换えてください)