2021年 | プレスリリース?研究成果
【TOHOKU University Researcher in Focus】Vol.016 地域の健康は個人の健康 -保健師の経験から開発した地域愛着メソッド-
本学の注目すべき研究者のこれまでの研究活动や最新の情报を绍介します。
东北大学大学院医学系研究科 大森 純子教授

东北大学大学院医学系研究科 大森 純子 (おおもり じゅんこ)教授
日本国宪法第二五条には、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公众卫生の向上及び増进に努めなければならない」とあります。この公众卫生の最前线で活跃しているのが保健师です。保健师が含まれる看护职としては他に、助产师、看护师、准看护师があります。このうち、保健师、助产师、看护师は国家资格であり、なかでも保健师は看护师の资格を併せ持っている必要があります。
大森さんは、圣路加看护大学(现在の名称は圣路加国际大学)を卒业后、病院看护师、产业保健师、行政保健师を経て研究の道に进み、2014年1月に东北大学大学院医学系研究科保健学専攻公众卫生看护学分野の教授に就任しました。公众卫生看护学とは、看护学、社会学、公众卫生学の知识を用いて公众の健康増进と病気予防を図るための研究领域です。
念仏讲が教えてくれた「みんな丈夫で元気」な暮らし
大森さんは、大学卒业から3年目に、千叶県佐仓市役所福祉部の保健师になりました。保健师と闻くとすぐに保健所を思い浮かべますが、保健所が设置されているのは都道府県と政令市?中核市です。各市町村に健康福祉関连の课や保健センター等が设置されており、保健师が配属されています。
佐仓市は佐仓藩の城下町として栄えた地方都市で、市街地の周辺に印旛沼などを拥する田园地帯が広がっています。大森さんは、1万2000人の地域の保健活动を一人で担当することになりました。担当地域はいくつもの地区に分かれており、地区ごとに文化や暮らしぶりが大きく异なるコミュニティが存在していました。仕事内容は、新生児や自宅疗养中の高齢者宅の家庭访问、住民の健诊や健康相谈、老人クラブや长寿大学などでの健康教育等でした。
なかでも印象的だったのが、在郷地区の念仏讲と呼ばれる老人会でした。その场を借りて、生活习惯病?寝たきり予防の讲习会を开き、味噌汁の塩分测定のデモもして讲习を终えます。すると自分の祖母の年齢の人たちから、「ためになったよ」というねぎらいの言叶がかけられます。しかしその舌の根も乾かぬうちに、「でも、ここらはみんな丈夫で元気だ」という言叶が决まって返ってきたのです。そしてその后は、各人が持ち寄った自慢の渍物をつまみながらの茶饮み话が延々と続きました。最后は、畑まで案内され、自慢の作物をお土产に持たされるのが常だったそうです。
そこでは、茶飲み話を交わす場が助け合いにつながり、和気あいあいとしつつも適度な距離間を保つ心地よい関係が存在していました。しかしそのときはまだ、こういう関係性は大切だと実感しつつも、「ここらはみんな」と語ることの真意をはかりかねていたといいます。 そんなモヤモヤを抱えながら大学院に進学した大森さんはエスノグラフィー的手法に基づく実地調査により、身近な他者との日常的な交流が健康に及ぼす影響を調べることにしました。その結果、和気あいあいとした関係性が、ヒーリングやケアリングとなっている可能性が見えてきました。
そこでさらに研究を进め、住民の高齢化が进む(かつての)新兴住宅地のコミュニティでのソーシャルキャピタルの向上を目指すにはどうすればよいか、そのために保健师にできることは何かを検讨することにしました。具体的には、在籍していた圣路加大学と佐仓市が连携协定を结び、前期高齢女性どうしの「気遣い合い」の関係づくりを轴とした主体的健康増进プログラムの开発プロジェクトを立ち上げたのです。
こうした一连の研究は现在も続いており、东北大学と连携自治体の千叶県白井市、埼玉県吉川市との共同事业として、「地域への爱着を育むプログラム」へと発展しています。
新型コロナウイルス感染症対策支援
2021年3月は、东日本大震灾から10年の节目にあたっていました。それに関係した人の出入りがあったせいか、宫城県では、3月16日に、新型コロナウイルス新规感染者数が、前日の54名から117名に跳ね上がりました。これを受けて、宫城県と仙台市は3月18日に独自の紧急事态宣言を発令。それに伴い、厚生労働省からは地域保健室长と保健指导室长が仙台に入りました。东北大学も、県知事の要请を受け、大森さんを中心に、保健学専攻看护学コースの教员22名と大学院生8名が同18日から仙台市保健所青叶支所等の支援に入りました。
大森さんたちが最初にしたことは、支援室の立ち上げでした。加えて、こうした支援业务未経験の大学スタッフや他県から派遣された保健师のためのマニュアルを整备しました。
积极的疫学调査、浓厚接触者?検査対象者の受诊调整、自宅疗养者?待机者の健康観察など、业务は多岐にわたります。
积极的疫学调査というのは、感染者の感染経路を特定するための行动歴と接触者に関する电话での闻き取り调査です。新规感染者に関する情报が医疗机関から保健所に入るのは18时过ぎになります。そのため、新规感染者に电话をかけるのは20时とか21时からになってしまいます。しかも1件につき30词60分は要します。
青叶支所は管辖区域に东北一の繁华街があり、公司のオフィスや各种学校も集中しているため、必然、感染者を多く抱えることになりました。なかには行动歴を知られたくない感染者もいて、调査する侧にもされる侧にもストレスがかかります。こんな夜に电话してくるなと怒り出す相手もいたそうです。保健师にしても、感染者の不品行を知りたくて闻き取り调査をしているわけではありません。感染経路を特定し、感染拡大を食い止めるためのヒアリングをしながら、体调管理や感染を広げないための行动を指导します。
浓厚接触者が高齢者の场合、検査の必要性を説明したうえで検査日时の予约を入れるまで、相手の反応に合わせた辛抱强くていねいな対応が求められます。自身も电话対応をしながら、大森さんは、看护职でなければできない対応だなあとつくづく思ったそうです。
紧急事态宣言で検査体制が强化されたこともあり、保健所では1日当たりの阳性者の数が300名を超えることも覚悟したといいます。阳性者の数は3月30日の205名をピークにしばらく上下した后4月14日には100名を下回る日が続くようになりました。
感染拡大に歯止めがかかった段阶で、大森さんたちは次の感染急拡大に备えた体制作りに取りかかりました。仙台市内の医疗系の大学?短大の看护系教员に声をかけ、保健所支援の経験を积んでもらったのです。最终的に64名の教员(保健师、助产师、看护师、歯科医师、薬剤师)が保健所支援に参加してくれたそうです。
今回の保健所支援で実感したのは、紧急事态が勃発して支援で呼ばれてからでは遅いということだったそうです。それでは后退戦を戦うしかないからです。大森さんはこれまで、住宅地のコミュニティでの健康づくりプログラムを推进してきました。新型コロナウイルス感染症で多くのクラスターを出した繁华街で働く人たちを対象に何ができるかを、考え始めたところだそうです。
奥贬翱が提唱したヘルスプロモーションは、健康は豊かに生きるための手段であってゴールではないと謳っています。それに加えて、病気は决して自业自得ではありません。特に新型コロナウイルス感染症に関しては、个々人、保健师、保健所だけでできることの范囲を超えています。みんなの健康をみんなで守るという心掛けが必要なのです。マスクをするのも、自分が感染しないためであると同时に、他人に感染させないためでもあります。
大森さんは、その意味でも、気遣い合うことの大切さや、日常生活でつながっている、颜が见えるコミュニティづくりの大切さを改めて実感しています。
文責:広報室 特任教授 渡辺政隆

仙台市保健所青叶支所での支援活动
関连リンク
问い合わせ先
东北大学総务企画部広报室
贰-尘补颈濒:办辞丑辞*驳谤辫.迟辞丑辞办耻.补肠.箩辫(*を蔼に置き换えてください)