2021年 | プレスリリース?研究成果
スピントロニクスで脳型コンピュータ向け新素子~ニューロンとシナプスの机能を一体化~
【本学研究者情报】
〇电気通信研究所 教授 深见俊辅
【発表のポイント】
- ニューロンとシナプスの机能が一体化されたスピントロニクス素子技术を开発
- 连结されたスピントロニクス振动子(ニューロン)间の同期発振の起きやすさをメモリスタ(シナプス)により不挥発に制御することに成功
- リザバー计算机やイジングマシンなどの脳型コンピュータの开発を新たな章へ
【概要】
脳の仕組みに学んだコンピュータ 「脳型コンピュータ」 の実現に向け、脳神経回路で重要な役割を担っているニューロン(注1)とシナプス(注2)を模した人工素子が開発されています。东北大学电気通信研究所の深見俊輔教授、金井駿助教、大野英男教授(現东北大学総長)、ヨーテボリ大学(スウェーデン)のJohan ?kerman教授らの共同研究チームは、スピントロニクス(注3)技术に基づくニューロンとシナプスが统合された人工构造を作製し、脳における「同期の制御」の机能を初めて実现しました。
共同研究チームは、ニューロンの机能を果たすスピントロニクス振动子(注4)を数珠状に连结し、その连结部分にシナプスの机能を果たすメモリスタが配置された一体化构造を作製しました。そしてこの振动子がスピントロニクスの効果により位相を揃えて振动する「同期発振(注4)」の起こる条件を、连结部分のメモリスタで自在かつ不挥発に制御できることを実証しました。
振动子が连结された构造はリザバー计算机(注5)やイジングマシン(注6)などの脳型コンピュータの构成要素としての利用が有望视されています。今回の実験では従来の研究とは异なり、ニューロンとシナプスが统合された构造での机能が実现されており、小规模ながら脳神経回路の动作様式を比较的忠実に再现しています。すなわち、脳の柔软性と効率性に迫る脳型コンピュータの実现に向けた开発を新たな章へと导く成果と位置付けることができます。
本研究成果は2021年11月29日付(英国時間)で英国の科学誌「Nature Materials」でオンライン公開されました。

図1) 本研究で開発したニューロンとシナプスの一体化構造の模式図(a)と走査電子顕微鏡像(b)。W(タングステン)、CoFeB(コバルト鉄ホウ素)、MgO(酸化マグネシウム)、AlOx(酸化アルミニウム)からなる积层膜が4つの狭窄部を持つようにパターニングされており、それが厂颈狈x(窒化シリコン)で覆われ、狭窄部と狭窄部の间には罢颈(チタン)と颁耻(铜)からなる上部电极が形成されている。奥/颁辞贵别叠积层构造に电流(滨SHNO)を导入すると、スピンホール効果などによって狭窄部で颁辞贵别叠の磁化が発振し、振动子として动作する(このことから电子顕微镜像ではスピンホールナノ振动子(厂贬狈翱1,2,3,4)と表记されている)。また罢颈/颁耻からなる上部电极に电圧(痴M)を印加すると、その履歴に応じて直下の惭驳翱/础l翱x/SiNxの电気抵抗が不挥発に変化する。すなわちメモリスタとして动作する。
【用语解説】
注1)ニューロン(神経细胞)
神経回路網を構成する細胞の一つ。人間の脳には 1000億個以上のニューロンがあると言われている。入力信号に応じた出力信号を生成する。入力信号強度と出力信号強度の間に非線形性があること、状態が短期的に保持されること(短期記憶)、などの特徴が知られている。スピントロニクス振動子(注4)はこの非线形性や短期记忆を模拟できる。
注2)シナプス
神経回路を构成するニューロン间の接合部の构造のこと。シナプスの信号伝达特性の変化により、ニューロン间の信号の伝达のしやすさ(结合强度)がアナログ(连続)的に変化する。またこの结合强度は一定期间保持され(可塑性を有する)、これが人间の记忆情报と対応している。人间の脳には100兆个以上のシナプスがあると言われている。
注3)スピントロニクス
电子の持つ电気的性质(电荷)と磁気的性质(スピン)を同时に利用することで発现される物理现象を明らかにし、工学的に利用することを目指す学术分野。従来は不可能であった磁気的性质や磁化方向の电気的な検出や制御、电気伝导特性の磁场や磁化による制御などが可能となる。
注4)スピントロニクス振动子(オッシレータ)、同期発振
ナノスケールの磁性体に電流が導入された際、スピントロニクスの効果によって磁性体の磁化にトルクが働き、一定周波数で定常的に振動するように設計された素子をスピントロニクス振動子(あるいはスピントロニクス発振器、スピントロニクスオッシレータ)などと言う。振動子を複数連結すると、それらの間の相互作用によって発振の位相が揃う(同期する)ことが知られており、この同期現象がスピントロニクス振動子を脳型コンピュータで利用する上での基礎となる。スピントロニクス振動子の具体例として、磁気トンネル接合から構成され膜面直方向に電流を導入するスピントルクナノ振動子(Spin-Torque Nano Oscillator:STNO)と、Wなどの非磁性重金属とCoFeBなどの強磁性層の積層構造で構成され膜面内方向に電流を導入するスピンホールナノ振動子(Spin-Hall Nano Oscillator:SHNO)などがある。今回の研究では後者が利用されている。これまでにヨーテボリ大学のグループにより100個程度の振動子での同期発振が実証されている。
注5)リザバー计算机
リカレントニューラルネットワークの一种であり、入力层、リザバー层、出力层からなる。リザバー层は复数のニューロンが比较的"疎"に结合したネットワークからなり、状态を短期间记忆する机能、同じ入力に対して同じ出力を出す机能(コンシステンシー)、异なる入力を区别する机能などが求められ、それを実现するために非线形性があり、かつ短期的な状态の记忆が可能な物理系を用いることが好ましい。スピントロニクス振动子からなるネットワークはこのリザバー层への适用が有望视されており、これまでに简易的な音声认识の原理実証実験などが行われている。
注6)イジングマシン
强磁性体や反强磁性体の磁気秩序の発现机构を记述するイジング模型を用いて情报処理を行う计算机の総称。磁性体では个々のスピンが交换相互作用により结合しており、これは脳神経回路において个々のニューロンがシナプスを介して结合しているのと类似していることから、脳型コンピュータの一种と见なすこともできる。
问い合わせ先
研究に関すること
东北大学电気通信研究所
教授 深见俊辅
电话 022-217-5555
贰-尘补颈濒 蝉-蹿耻办补尘颈*谤颈别肠.迟辞丑辞办耻.补肠.箩辫(*を蔼に置き换えてください)
报道に関すること
东北大学电気通信研究所 総務係
电话 022-217-5420
E-mail riec-somu*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
东北大学は持続可能な开発目标(厂顿骋蝉)を支援しています