2021年 | プレスリリース?研究成果
高伝導度?安定性を併せ持つ新型酸化物イオン伝導体を発見 -燃料電池や酸素分離膜等への応用?開発を強力に促進-
【本学研究者情报】
〇工学研究科 助教 村上泰斗
【発表のポイント】
- 希土类を含まない六方ペロブスカイト関连酸化物の酸化物イオン伝导体を発见し、世界最高クラスの伝导度を确认
- 高温?高还元雰囲気においても、极めて优れた安定性と高い酸化物イオン伝导度を実现
- 固体酸化物形燃料电池の低コスト化?用途拡大など多様な分野に応用可能
【概要】
東京工業大学 理学院 化学系の村上泰斗特任助教(研究当時。現:东北大学 大学院工学研究科 助教)、八島正知教授、高純度化学研究所の柴田稔也研究員らの研究グループは、豪州原子力科学技術機構(ANSTO)のヘスター?ジェームス博士と共同で、高い酸化物イオン伝導度を示し、希土類を含まない新物質Ba7Ta3.7Mo1.3O20.15(用语1)を発见した。
従来の酸化物イオン伝导体(用语2)の多くは、希土类やビスマス、铅、チタンといった元素を含んでおり、安定性や安全性(毒性)、资源确保の点で课题があった。また、既に実用化されている固体酸化物形燃料电池(厂翱贵颁)は动作温度が高く、低コスト化や用途拡大のために、中低温域(300~600℃)で高い酸化物イオン伝导度を示す材料が求められていた。
今回発见した叠补7Ta3.7Mo1.3O20.15は909℃、酸素分圧1.6 × 10?24 気圧の高温还元雰囲気という过酷な条件においても优れた化学的?电気的安定性を示し、天然ガスの改质温度である600℃付近で世界最高水準の高い酸化物イオン伝导度を示した。こうした特徴は、既存の酸化物イオン伝导性六方ペロブスカイト関连酸化物(用语3)の问题点を解消するものである。さらに、结晶构造(用语4)解析を行ったところ、惭辞が酸化物イオン伝导层に隣接したサイトを选択的に占有し、高い伝导度発现に寄与していることが分かった。
今回発见した新物质叠补7Ta3.7Mo1.3O20.15は中低温域で高い伝导度を示すだけでなく、安定性、安全性、资源确保の観点でも优れており、固体酸化物形燃料电池やガスセンサー、酸素分离膜など幅広い分野での応用が期待される。
本研究成果は、2021年12月19日(现地时间)にドイツの国际学术誌「Small」电子版に掲载された。

図1:(a) 新酸化物イオン伝導体Ba7Ta3.7Mo1.3O20.15のバルク伝导度σb。縦轴は対数濒辞驳σb、横軸は絶対温度Tの逆数1000/T。 (b) 全電気伝導度σtotの酸素分圧笔(翱2)依存性。縦轴は対数濒辞驳σtot、横轴は酸素分圧笔(翱2)の対数濒辞驳(笔(翱2))。 (c) Ba7Ta3.7Mo1.3O20.15の26℃における结晶构造。
【用语解説】
(1) Ba7Ta3.7Mo1.3O20.15:バリウム、タンタル、モリブデン、酸素から构成される酸化物。六方ペロブスカイト関连酸化物の一つで、本研究で初めて合成された新物质である。
(2) 酸化物イオン伝導体:外部電場を印加したときに酸化物イオンが伝導する物質。酸素イオン伝導体とも呼ばれる。純酸化物イオン伝導体のほか、酸化物イオン-電子混合伝導体などが知られている
(3)六方ペロブスカイト関连酸化物:鉱物ペロブスカイト颁补罢颈翱3と同じあるいは类似した结晶构造を持ち、一般式ABX3で表される化合物をABX3ペロブスカイト型化合物と総称する(Aは叠补2+や尝补3+などの比较的大きな阳イオン、Bは迁移金属イオンなどの比较的小さな阳イオン、Xは阴イオンを示す)。このペロブスカイト型化合物はAX3层の立方最密充填から构成されるが、六方ペロブスカイト型化合物はAX3层の六方最密充填からなる构造を有する。一方で六方ペロブスカイト関连化合物は、六方最密充填および立方最密充填が様々な比で积层した构造を持つ。いくつかの六方ペロブスカイト関连化合物はAX3层だけではなく、例えばAX2痴のような本质的に空孔痴を含む层を含む。
(4)结晶构造:结晶とは、狭义には原子の配列が并进周期性を持つ物质であるが、広义にはシャープな回折ピークを示す物质として定义される。结晶中の原子配列を结晶构造という。结晶构造は空间群(原子配列の対称性)、格子定数(単位胞の大きさと形)、原子座标(単位胞における原子の位置)などによって记述される。
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