2023年 | プレスリリース?研究成果
【TOHOKU University Researcher in Focus】Vol.021 生きものに学ぶロコモーション
本学の注目すべき研究者のこれまでの研究活动や最新の情报を绍介します。
东北大学大学院工学研究科 大脇大准教授?ディスティングイッシュトリサーチャー

大学院工学研究科 大脇 大 (おおわき だい)准教授
そんなにたくさん脚があるのに、よく络まずに歩けるねと问われたムカデは、はたと考え込んで歩けなくなってしまったという故事があります。逆に言うと、生きものの歩行や走行に脳はそれほど関与していないということなのでしょうか。そういえば二本しか脚のない人间も、ふつう、歩くときは无意识に脚を出しています。しかし、ロボット研究が进んだ现在も、生きもののようにスムーズに歩くロボットは未だ开発されていません。大脇さん、歩行ロボットの研究から、生きものの自律的な运动机能に兴味をもつようになりました。
始まりは受动歩行
子供の顷からプラモデルなどの工作が好きで、地元名古屋大学の工学部に进んだ大脇さんは、所属研究室を决める研究室访问で受动歩行机械の动画を见て衝撃をうけ、ロボット研究に梦を抱きました。それは、当时世界中で盛んに研究されていた、腰関节构造によって2本の脚が结合されただけで、モーターもセンサーも付いていないのに坂道などを自律的に歩き下りる受动的二脚歩行机械でした。
そこで大学院の修士课程に进学すると、さっそく受动的二脚歩行の研究に取り组みました。たしかに、脚と膝関节の构造をうまく作ってやると、振り子に似た原理で坂道を自発的に歩いて降りる装置になるのです。
つまり要は、左右の脚の着地と前进のバランスとタイミングということ。歩行时、人は头で考えながら歩いているわけではなく、中枢神経系の下位レベルと脊髄の神経回路によって制御されているらしいのです。なので、センサーなしの机械的な构造でも歩行を再现できるのです。そこでその安定化构造をモデル化することで次の研究につなげました。
指导教授の异动に伴って东北大学に场所を移した博士课程では、研究を受动的二脚走行に発展させました。まず目指したのは、受动走行をモデル化し、シミュレーションによって再现することでした。苦心の末にモデル化に成功し、腰のバネと脚のバネの弾性を変数として设定することで、何通りかの受动歩行と受动走行のパターンが再现できました。
シミュレーションでは、実际の人间の歩行?走行パターンに似た结果が得られました。この研究の目标は、モデル実験を基に、脚で移动する生きものの高速运动が実际にどのように制御されているかに迫ることでした。そこで受动走行を安定化させている原理を探ろうとしたのですが、得られた结果は、受动歩行の安定化原理と同じというものでした。
大脇さんは、歩行と走行に関わる原理が同じという结果に违和感を感じました。二脚受动歩行では、片脚が地面についているあいだに反対の脚を前に振り出し、着地する瞬间とほぼ同时に、それまで着地していた脚を持ち上げて前に振り出すという动きを繰り返します。安定なモデルでは、片脚が着地するタイミングをフィードバックして、反対の脚を踏み出すタイミングを合わせているのです。
しかしどうでしょう。二脚走行では、一度に着地する脚は左右どちらかの脚一本ですが、考えてみれば、両脚が空中を跳んでいる瞬间も存在します。こう书くと当たり前に闻こえますが、それまでの大脇さんには、この事実が见えていませんでした。そうだ、高速二脚受动走行では、着地状态と跳跃状态、2つのフィードバックが効いているのではないか。
この「大発见」が、その后のブレークスルーをもたらしました。研究チームは、腰と脚にバネを装着した受动走行机械笔顿搁400を试作し、ほんとうに受动走行が可能であることを実証する実験を开始しました。
実験は苦労の连続だったそうです。それでも笔顿搁400の设定を変えて、倾斜をつけたトレッドミルに何度も投げ上げた末に、ついに世界初の腰つき二脚受动走行に成功したのです。。実験成功から间もない时期に开催された国际会议でこの动画を披露したところ、海外の研究者から大喝采を浴びたそうです。
四足动物そして昆虫へ
大脇さんの関心は、その后、四脚や六脚も含めた脚歩行动物全般に共通する制御机构に広がりました。しかし同じ四足动物でも、歩行様式は多様です。しかも速度に応じて脚の运びも変わります。
たとえばウマは、ゆっくりと歩く常歩(なみあし)では右后脚→右前脚→左后脚→左前脚の顺で脚を出しています。それがトロットとも呼ばれる速歩(はやあし)になると、2つずつの脚が対になり、(右后肢+左前肢)→(左后肢+右前肢)の顺です。さらに速い駆歩(かけあし)では、右后脚→左后脚+右前脚→左前脚の3拍子、袭歩(しゅうほ)すなわちギャロップになると、駆歩と同じ3拍子の歩様なのですが、同时に着地する脚は、駆歩の最大3から2に减るといった具合です。
最速で走るチーターは、ウマの常歩と同じ4拍子で、左右の前脚をずらして着地して蹴り出すと同时に背中のバネを効かせて后脚を空中でぐいと引き寄せ、左右の后ろ足を顺に着地させて蹴り出しています。
ここで大脇さんは、个々の动物の歩行パターンを再现するのではなく、余分な要素を排除して必要最小限の制御机构の再现を目指しました。脚が着地しているかどうかと、その际に脚にかかる圧力という情报だけで、脚の协调パターンが自律分散的に制御されるメカニズムをモデル化したのです。そして、个々の脚に圧力センサーをつけることで脚の出し方を协调させるしました。
これによって典型的な歩行パターンを再现することはできました。しかし、どうやっても実际の生きものには近づけないという限界も感じていました。そこで、昆虫の研究者の协力を得て、神経系が四足动物よりも単纯な昆虫の运动様式の研究を始めることにしました。
コオロギは、水に入れると、まるで人间の平泳ぎのような格好で泳ぎます。地面を歩くときとはまるで异なる自発的な动きをするのです。脚の数を减らしても、それに応じたあるき方をします。そのコオロギの机能を调べることで、ロボットに実装することを目指すことにしたのです。
しばらくすると海外留学の机会がめぐってきたので、ナナフシの歩行を研究しているドイツの研究室に留学しました(2018?9年に2回に分けて延べ9ヶ月)。印象的だったのは、当たり前のように実験装置や计测装置を自作したところ、とても惊かれたことだったそうです。生物学の研究室では、装置の製作は、完全に技官任せだったからです。
帰国后、コオロギに限らず、いろいろな生きものに电极をつけて歩き方を调べる研究をしています。昨年の夏は、青叶山でナナフシを採集して実験に使ったそうです。それに加えて、クラゲの研究も始めました。クラゲのしなやかな动きを、生体システムの「やわらかさ」に注目する「ソフトロボット学」で活用してみたいとの思いからです。
応用研究としては、リハビリ用の装具にロボット工学を取り入れる研究をしています。市贩の歩行补助装置に装着する、安価で軽量なバネ付きアタッチメントの开発です。
大脇さんの最终目标は生きものに匹敌する动き方をするロボットです。そのために今后とも、さまざまな生きものに学んでいきたいそうです。
文責:広報室 特任教授 渡辺政隆
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东北大学総务企画部広报室
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