2023年 | プレスリリース?研究成果
生命誕生前の沿岸域でタンパク質生成 模擬実験でホウ酸を触媒として最長のペプチド生成
【本学研究者情报】
〇大学院理学研究科地学専攻
准教授 古川善博(ふるかわ よしひろ)
【発表のポイント】
- 「初期の地球でどのようにアミノ酸がつながってタンパク质が生成したのか?」は生命の起源解明に向けて明らかにすべき大きな谜の一つです。
- アミノ酸がほとんどつながらないと考えられていた中性の蒸発环境で、ホウ酸を触媒とすることにより、これまでの研究で最も长い39分子のアミノ酸が结合したポリペプチド注1の生成に成功しました。
- 生命の起源にとってタンパク质と同様に重要な遗伝分子であるリボ核酸は、中性で安定でありホウ酸が合成を促进することから、この研究结果は、生命诞生前の地球の沿岸域(中性の蒸発环境)でタンパク质と搁狈础が生成し、相互作用して、生命へと化学的に进化していった可能性を示しています。
【概要】
タンパク质は生体反応を触媒する酵素として働き、生命に不可欠な高分子です。その一方で、生命には顿狈础とリボ核酸(以下、搁狈础)と呼ばれる遗伝の役割を担う核酸も不可欠であり、それらの机能を持つ高分子が生命诞生前の地球でどのように生成したかは、生命の起源における大きな谜となっています。従来の研究では、核酸が不安定となるアルカリ性の蒸発环境ではアミノ酸が繋がりやすく、模拟実験において最长で20分子のアミノ酸が繋がったペプチドが生成することが报告されていました。一方で、核酸が安定となる中性环境ではアミノ酸がほとんどつながらないことが知られていました。
东北大学大学院理学研究科の古川善博准教授の研究グループは、搁狈础材料分子の生成を促进することが知られるホウ酸に着目し、ホウ酸がアミノ酸の重合反応注2にどのような影响を与えるのかを研究しました。その结果、中性と酸性の蒸発环境でホウ酸がアミノ酸の重合反応を触媒し、中性では最も単纯なアミノ酸であるグリシンが39分子结合したポリペプチドが生成することを明らかにしました。この研究结果は、生命诞生前の地球の沿岸域でタンパク质が生成し(図1)、同じ场所で生成した可能性のある核酸と相互作用して、生命へと化学的に进化していった可能性を示しています。
この研究成果は、5月8日に化学分野の学术誌Communications Chemistryで発表されました。

図1. 生命誕生前の沿岸蒸発環境でホウ酸の触媒作用によってアミノ酸からペプチドが形成するモデル図(??Yoshihiro Furukawa)
【用语解説】
注1 ポリペプチド
アミノ酸がペプチド结合で繋がった分子をペプチドと呼び、一般に短いものをペプチドまたはオリゴペプチド、长いものをポリペプチドと呼ぶ。タンパク质は一般に50分子以上のアミノ酸がペプチド结合で繋がった分子。
注2 重合反応
似た分子がつながり合って长い分子ができる反応で、タンパク质はアミノ酸が重合してできる分子。
问い合わせ先
(研究に関すること)
东北大学大学大学院理学研究科地学専攻
准教授 古川 善博 (ふるかわ よしひろ)
TEL: 022-795-3453
E-mail: furukawa*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(报道に関すること)
东北大学大学院理学研究科
広报?アウトリーチ支援室
TEL: 022-795-6708
E-mail: sci-pr*mail.sci.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)