2023年 | プレスリリース?研究成果
ゴルジ体の亜鉛調節機構を解明 ゴルジ体亜鉛トランスポーターの機能不全による病気発症メカニズムの解明に期待
【本学研究者情报】
〇多元物质科学研究所生体分子构造研究分野 教授 稲叶谦次
【発表のポイント】
- ゴルジ体内での游离亜铅浓度の分布を高空间分解能で明らかにしました。
- ゴルジ体に局在する3つの亜铅トランスポーター复合体窜苍罢4、窜苍罢5/6、窜苍罢7に依存したゴルジ体内の厳密な亜铅浓度制御机构を解明しました。
- 亜铅结合型シャペロンタンパク质贰搁辫44の机能と细胞内输送に、3つの窜苍罢复合体が异なる役割を果たすことを発见しました。
【概要】
亜铅は必须微量元素であり、全ての生物の成长、健康维持に重要な役割を持ちます。一方、消化酵素やホルモンなど多くの分泌タンパク质は小胞体で合成され、ゴルジ体(注1)を経由して成熟化します。
これまで研究チームは、ゴルジ体でシャペロンタンパク质(注2)贰搁辫44が亜铅イオンと结合することで分泌タンパク质の品质管理(注3)を行うことを発见しました(参考文献参照)。またいくつかの分泌タンパク质は、ゴルジ体を経由する过程で亜铅と结合し、成熟することも报告されています。このようにゴルジ体による亜铅イオン浓度の制御は生理的に非常に重要であることは判明しているものの、その制御机构についてはほとんど未解明でした。
东北大学多元物質科学研究所の天貝佑太助教、渡部聡助教、稲葉謙次教授、小和田俊行助教、水上進教授、大学院生命科学研究科の経塚淳子教授、およびサン?ラファエル研究所(イタリア)のロベルト シティア教授らは、ゴルジ体の亜鉛イオン濃度調節の詳細な分子機構の一端を解明し、そのタンパク質品質管理機構における役割を明らかにしました。研究チームは亜鉛定量プローブZnDA-1Hを用いた濃度計測により、ゴルジ体内に約60~100nMの亜鉛濃度の勾配が存在することを発見しました。また超解像顕微鏡(注4)を用いた観察により、3つの亜铅トランスポーター(注5)复合体がゴルジ体の异なる层板に局在し、亜铅浓度、ひいては贰搁辫44の细胞内局在、输送、机能を调节することを解明しました。
本成果はゴルジ体の亜鉛恒常性維持の破綻が分泌タンパク質の生合成異常、ひいては病態発生のメカニズム解明につながることが期待されます。本研究成果は、2023年5月9日に科学雑誌Nature Communicationsに掲載されました。

図1. ゴルジ体遊離亜鉛イオン濃度測定 (A) ゴルジ体の各層板に局在する様々なHaloTag融合タンパク質を作製し、ZnDA-1Hをそのゴルジ層板に特異的に局在させ、生細胞亜鉛イメージングを行った。(B)各ゴルジ層板における遊離亜鉛イオン濃度の定量値。
【用语解説】
注1.ゴルジ体
细胞内小器官の一つであり、シス、中间、トランスの层板构造を持つ。小胞体からゴルジ体に输送されてきた分泌タンパク质は、糖锁修饰や部位特异的切断、金属イオンの配位などを受ける。ゴルジ体で加工を受けた分泌タンパク质は、トランスゴルジネットワークを介して细胞外や细胞内オルガネラなどの目的区画へと输送される。
注2.シャペロンタンパク质
タンパク质の折りたたみを促すタンパク质の総称。新规に翻訳合成され天然型立体构造を获得していないタンパク质は、凝集しやすく细胞毒性を示すが、シャペロンタンパク质が结合することで凝集が抑制され、天然型构造へのフォールディングが促进される。
注3.分泌タンパク质の品质管理
分泌タンパク质の多くは、翻訳合成される过程で小胞体中に挿入される。挿入直后は天然型の立体构造を保持していないため、小胞体中の様々なシャペロンタンパク质がその折りたたみを补助する。最终的に天然型の立体构造を获得した分泌タンパク质分子は目的の区画へと输送されるが、天然型立体构造を获得できなかったタンパク质は分解される。
注4.超解像顕微镜
通常の光学顕微鏡ではxy方向の空間分解能が230 nm程であり、それを光の回折限界と呼ぶが、その空間分解能を超えた解像度で観察が可能な顕微鏡。本研究ではCarl ZEISS社のAiryscan2超解像顕微鏡を使用した。
注5.亜铅トランスポーター
生体膜を隔てて亜铅イオンの输送を行う膜内在性のタンパク质。细胞外やオルガネラ内腔から细胞质方向へ亜铅イオンを输送する窜滨笔ファミリー、その反対方向へ输送する窜苍罢ファミリーの2种类が知られる。
(参考文献)2019年2月に公表した成果については下记をご参照ください。
プレスリリース「細胞内の亜鉛の新しい生理的役割が明らかに 亜鉛とシャペロンタンパク質 ERp44 による新しいタンパク質品質管理機構の仕組みを解明」(2019年2月13日)
问い合わせ先
(研究に関すること)
东北大学 多元物质科学研究所
教授 稲叶 谦次(いなば けんじ)
(大学院生命科学研究科/理学研究科化学専攻 兼担、
九州大学生体防御医学研究所クロスアポイント)
Tel: 022-217-5604
E-mail: kenji.inaba.a1*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(报道に関すること)
东北大学 多元物质科学研究所 広報情報室
Tel: 022-217-5198
E-mail: press.tagen*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
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