红桃视频

本文へ
ここから本文です

脳内グリアのハイパードライブ てんかん様神経発振を引き起こすグリア細胞の作用を発見

【本学研究者情报】

〇生命科学研究科 教授 松井広

【発表のポイント】

  • てんかん(注1)は有病率1%の极めて一般的な脳の病気ですが、何がきっかけとなって、脳内の神経细胞が过剰に兴奋して発作が起きるのかは不明でした。

  • 脳には、神経细胞とは别种のグリア细胞(注2)があり、中でもアストロサイト(注3)には神経细胞の活动をさまざまに调整する役割があることが知られています。
  • マウスの脳のアストロサイトの活动を光计测したところ、てんかん様神経発振に先立ってアストロサイト活动が生じることが示されました。
  • アストロサイトからの作用がきっかけとなって、てんかん発作が生じることが示されたため、てんかんに対する新たな治疗戦略が示唆されました。

【概要】

発作を抑える抗てんかん薬(注4)の开発は进んでいるものの、全ての患者で発作がコントロールできるわけではありません。また、そもそも、てんかんの発作は、どういったきっかけで起きるのか、未だにそのメカニズムの多くは谜に包まれています。

东北大学大学院医学系研究科の荒木峻大学院生(研究当时)、大学院生命科学研究科の松井教授らのグループは、実験动物のマウスを用いて、脳の中の海马に光ファイバーを埋め込み、グリア细胞の中でもアストロサイトの活动を光计测(注5)しました。脳内に金属の铜を人工的に埋め込むと炎症反応(注6)が生じ、てんかん様の神経発振现象が、1日に数回、散発的に生じるようになることが知られています。そこで、铜留置による神経过活动を调べたところ、神経発振に20秒程度も先立ち、アストロサイトの活动が始まることが示されました。さらに、アストロサイトの活动を电気的に刺激する方法や、アストロサイトの代谢机能を薬で阻害する方法などを组み合わせることで、アストロサイトが脳神経活动を强力に诱导(ハイパードライブ)することを明らかにしました。アストロサイトの活动制御がてんかんの新たな治疗戦略となることが期待されます。

本研究成果は2024年4月9日付で脳科学の専门誌骋濒颈补に掲载されました。

顿翱滨:

図1. 脳内グリアのハイパードライブ。脳内の海馬に銅を留置したところ、1日に数度、自発的にてんかん様神経発振が見られるようになりました。海馬に光ファイバーを埋め込んで、海馬のグリア細胞のうち、アストロサイトの活動を光計測したところ、海馬でのてんかん様神経発振が始まるより、20秒程前から、アストロサイト細胞内のCa2+浓度が上昇を始めることが示されました。アストロサイトからのハイパードライブ(超兴奋性の作用)がきっかけとなって、神経细胞の过活动が生じ、てんかん発作に至ることが示唆されました。

【用语解説】

注1. てんかん: てんかんとは、脳が一時的に過剰に興奮することによって、意識を失ったり、けいれんが生じたりする発作を引き起こす病気です。てんかん発作では、脳の神経細胞において、過剰な電気的興奮が生じます。脳波計で記録すると、多数の神経細胞が周期的に活動する様子が分かるため、このような神経活動を、神経発振と表現することがあります。てんかんの原因はさまざまであり、遺伝的要因、脳の損傷、脳の発達異常、感染症、脳腫瘍、脳血管障害、または外傷などが関連すると考えられています。てんかんには、一度または数回の発作のみを経験する人から、頻繁に発作が起こる人まで、さまざまな程度の重症度があります。また、てんかんによるけいれん発作が繰り返されると、次第にてんかんが増悪化する場合も多いことが知られています。

注2. グリア細胞: 脳実質を構成する神経細胞以外の細胞は、総称して、グリア細胞と呼ばれていて、脳内には神経細胞に匹敵する数のグリア細胞があります。グリア細胞は、大きく分けて、アストロサイト、ミクログリア、オリゴデンドロサイトに分類されています。脳内での情報処理は、膨大な数の神経細胞同士が織り成すネットワークを通して行われていると考えられています。一方、グリア細胞は、神経組織を構造的に支え、神経細胞に栄養因子を受け渡すためだけの細胞群であると長らく考えられてきました。しかし、近年、グリア細胞からの作用を通して、神経回路の動作は種々な影響を受けていることが報告されています。

注3. アストロサイト アストロサイトは、グリア细胞の中で一番多く存在し、脳内の血管と神経细胞间のシナプスの双方に突起を伸ばすことから、特に神経情报処理との関连が深いことが推测されています。このアストロサイトは、周囲の神経细胞の活动に反応し、何らかの伝达物质を放出したり、イオン浓度调节机能を発挥したりすることで、神経回路の动作に影响を与えます。しかし、アストロサイトは、単に、神経活动に対して受动的に反応するだけではなく、むしろ、アストロサイトからの能动的な働きかけが原因となって、神経细胞の働きが制御されている可能性が指摘されています。

注4. 抗てんかん薬: 抗てんかん薬は、脳の神経活動を調整し、異常な神経活動を抑制することによって作用します。抗てんかん薬には、作用機序の異なるさまざまな種類がありますが、一般的には、神経細胞の興奮性を抑制することで発作の発生を防ぎます。抗てんかん薬は長期間にわたって使用されることが多いですが、副作用や耐性の問題が発生することがあります。

注5. 光計測: 脳深部に光ファイバーを刺し入れて、蛍光信号を計測する方法をファイバーフォトメトリー法と呼びます。本研究では、細胞内のCa2+に応じて、蛍光特性が変化する蛍光センサータンパク质を、脳内アストロサイトに人工的に遗伝子発现させたマウスを用いました。なお、当研究室では、细胞内颁补2+をセンス(検出)するように设计された蛍光センサータンパク质でも、局所血流量等の変动によって、蛍光信号は影响されてしまうことを示してきました。そこで、本研究では、これらの影响を选り分ける工夫が施された手法を用いて、细胞内颁补2+浓度の変动を抽出して解析しました。

注6. 炎症反応: 脳組織に金属が接触すると炎症反応が起こることがあり、神経細胞の損傷や神経機能の障害に進行することがあります。銅は、神経細胞の正常な機能に必要な微量元素の1つではありますが、過剰な銅の蓄積は、神経毒性につながります。一方、タングステンやプラチナ等の金属は生体適合性が高いため、脳波記録用の電極の素材として使われています。

详细(プレスリリース本文)PDF

问い合わせ先

(研究に関すること)
东北大学大学院生命科学研究科
教授 松井 広(まつい こう)
TEL: 022-217-6209
Email: matsui*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(报道に関すること)
东北大学大学院生命科学研究科広報室
高橋 さやか(たかはし さやか)
TEL: 022-217-6193
Email: lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

sdgs_logo

sdgs03

东北大学は持続可能な开発目标(厂顿骋蝉)を支援しています

このページの先头へ